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【2027年後半開業】マリオットホテルが賃貸住宅事業に参入

マリオット・インターナショナルが、自社ホテルブランドを冠した「賃貸住宅」事業に初めて乗り出します。第一弾は、Wブランドを掲げた米オハイオ州クリーブランドの「W Apartments Cleveland(Wアパートメンツ・クリーブランド)」で、2027年後半の開業を予定しています。これまで分譲が中心だったブランド・レジデンス事業を、入居者=テナント向けの長期賃貸へと広げる動きで、同社にとって明確な路線転換となります。

Photo Credit: A unit at W Residences in the Back Bay district of Boston. Marriott International
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築60年超のオフィス棟を「W」に再生、227戸の賃貸住宅

舞台となるのは、クリーブランド中心部に建つ「タワー・アット・エリービュー(Tower at Erieview/旧エリービュー・タワー)」です。1964年竣工、地上40階・高さ約529フィート(約161m)の高層ビルで、隣接する商業施設「ギャラリア」とともに米国国家歴史登録財(National Register of Historic Places)に登録されている歴史的建造物です。空室が目立っていたオフィス棟を、総事業費約2億1,800万ドル(約330億円)をかけて大規模に再生します。

全体計画では、227戸のWブランド賃貸住宅に加え、210室のWブランドホテル(オハイオ州初のW)、38階のファインダイニング・レストラン&バー、約1,400㎡(15,000平方フィート)のボールルーム、スパ、フィットネスセンター、ロビーラウンジなどを整備します。物件を所有・開発するのは地元の投資家グループであるカスーフ家(Kassouf Development)で、運営は第三者の管理会社を通じて行います。

「分譲」でも「短期貸し」でもない、第三のモデル

マリオットがこれまで展開してきたブランド・レジデンスは、ホテル同等のサービスや共用施設を備えた高級住宅を「分譲(売る)」モデルが中心でした。一方、同社にはレジデンスの所有者が不在時に自室をホテルスタイルの短期滞在用として貸し出すプログラムもあり、対象は米国・カナダで約1,500戸、世界で2,000戸超に及びます。

今回のクリーブランド案件は、このいずれとも異なります。所有者による一時的な貸し出しではなく、入居者が住戸を長期で借りる「賃貸住宅」としてブランドを冠する点が新しいといえます。マリオットのグローバル・ブランド・レジデンス事業と、米国・カナダのラグジュアリーホテル開発を統括するダナ・ジェイコブソン(Dana Jacobsohn)氏によれば、賃貸契約には24時間対応のコンシェルジュ、ドアマン、ベルマンによるサービスや、Wブランドのイベントへの参加機会が含まれます。スパ、フィットネス、ルーフトップのバー&レストランといったホテルアメニティも利用できます。

153プロジェクトに拡大、マリオットが賃貸に踏み出す理由

米旅行専門メディアSkiftの報道によれば、マリオットのブランド・レジデンス事業は足元で拡大を続けています。現在153件のプロジェクトを展開し、2025年だけで前年比約50%増の55件の開発契約を締結。世界で183件の開発計画を抱えるとされます。

このモデルがマリオットにとって魅力的なのは、自社で多額の資本を投じずに手数料収入を得られるためです。販売価格の一部と年間管理費を受け取る、いわゆるアセットライト型の収益構造です。開発業者側にも、ブランド使用許諾による高価格帯での販売が可能になるほか、資金調達がしやすくなるメリットがあります。Skiftによれば、竣工前の手付金が物件価格の最大70%に達することもあり、これが金融機関から自己資本とみなされるため、建設資金の確保に寄与するということです。

ブランド付きは30%超のプレミアム、需要は新興国へ拡大

不動産サービス大手サヴィルズによれば、ブランド付きレジデンスは同等の無ブランド物件に比べて通常30%以上高い価格で取引され、再販時にも優位性があるとされます。実際、2026年5月にはマリオットがブランドをライセンス供与する「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ヒューストン」のペントハウスが3,000万ドル(約45億円規模)で売買契約に入り、テキサス州のコンドミニアム取引として公開記録ベースで最高額となる可能性が指摘されています。

需要の裾野も広がっています。Skiftによれば、サヴィルズは今年、新たに25カ国でブランド・レジデンスのプロジェクトが立ち上がると予測しています。マリオットはインドを新市場とみなし、オーストラリアでの展開も検討する一方、中東では紛争の影響で一部計画が中断しているということです。購入層もこれまで定説とされた「50歳以上の経営者層」にとどまらず、ファミリー層の動きも出ており、ロングアイランドの「ザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ノース・ヒルズ」では家族向けの需要を受けてキッズ向け遊具などの設備が追加されたとされます。

所有から「利用」へ、ホテルブランドの新たな収益軸

賃貸への参入は、ホテルブランドが「住戸を売る」ビジネスから、より幅広い「ブランド体験を提供する」ビジネスへと軸足を広げる動きと位置づけられます。所有のハードルを越えられない層にもブランドの暮らしを届けられる賃貸モデルは、ヒルトンやアコーなど競合も注視するテーマです。クリーブランドでの成否が、ホテルブランド付き賃貸住宅という新カテゴリーの広がりを占う試金石となりそうです。

参考

注:本文中の153件・55件・183件のプロジェクト数、手付金70%、新規25カ国、インド/オーストラリア/中東の動向、ノースヒルズの設備追加は、Skift記事(会員エリアを含む)に基づきます。ドル円換算は概算で、表記時点のレートにより変動します。

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