ケンピンスキー・ホテルズは2026年4月2日、チェコ・プラハの歴史地区マラー・ストラナ(Malá Strana/小地区)に建つ「オーガスティン ホテル プラハ(Augustine Hotel, Prague)」を完全所有で取得したと発表しました。同グループにとって50年以上ぶりとなる買収で、1970年のホテル フィーア・ヤーレスツァイテン ケンピンスキー ミュンヘンへの投資以来の出来事です。客室は101室(うちスイート20室)。2026年4月1日からホワイトレーベルのラグジュアリーホテルとして営業を続け、デザイン主導の改装を経て、2026年後半にケンピンスキーブランドへ改称される予定です。

今回の買収がニュースとして際立つのは、金額や規模ではなく、ヨーロッパ最古のラグジュアリーホテルグループが自ら不動産を持つという決断そのものにあります。ケンピンスキーは発表のなかで、この取引を「アセットヘビー(資産保有型)へと軸足を移す戦略の重要な一歩」と位置づけました。運営受託を積み重ねる従来型のモデルではなく、ランドマーク物件へ直接投資して所有することで、ゲスト体験を最初から最後まで自らコントロールするという考え方です。CEOのバーバラ・ムッカーマン氏は「オーガスティン ホテル プラハのようなホテルを取得する機会は極めて稀」と述べ、ヨーロッパ屈指のラグジュアリー市場でヘリテージ資産を確保する意義を強調しています。
舞台となるのは、プラハ城の足元に800年以上前から続く聖トマス修道院(アウグスチノ会)です。修道院は現在も祈り・労働・学びの日課を守る修道士たちの生活の場であり、ホテルはその敷地の一部を明確に区切って占めています。客室の多くには修道士の旧居室だったころのヴォールト天井や木の梁がそのまま残り、歴史そのものが内装として立ち上がる構成です。ケンピンスキーは「建物の建築的な一体性と歴史的性格を守ることに軸足を置いたまま」、全客室とパブリックスペースをデザイン主導で改装するとしています。

館内には専門レストランのほか、修道院のかつての食堂を転用した「ザ・リフェクトリー・バー(The Refectory Bar)」を含む2つのバーコンセプト、スパとフィットネスセンター、そして数世紀にわたる神学・科学の蔵書を収める「ザ・モナスティック・ライブラリー(The Monastic Library)」が置かれています。400平方メートルを超えるイベント・会議スペース、650平方メートル以上の屋外テラスと庭園も備え、これまで各国の国家元首や文化人、グローバル企業の経営層を迎えてきたと公式リリースは記しています。
チーフ・プロダクト&エクスペリエンス・オフィサーのラシャ・ラバビディ氏は、本件を「ケンピンスキーの次章をどう具体化するかを決定づける瞬間」と表現しました。直接所有によってデザイン、F&B、ウェルネス、ゲスト体験のすべてを一貫して設計できることが、今回の投資の実質的な狙いです。改装後のオーガスティンは「ケンピンスキー・オブ・ザ・フューチャー」の設計図を最初に物理的・体験的に体現する物件として、ブランドの旗艦的な位置づけを担うことになります。
周辺環境
ホテルが建つマラー・ストラナは、ヴルタヴァ(モルダウ)川左岸、プラハ城の直下に広がる歴史地区です。ケンピンスキーは発表のなかで、プラハがヨーロッパで最も訪問者の多い首都の上位5都市に入り、ラグジュアリーホスピタリティへの需要が伸びている点を挙げています。1000年以上にわたってヨーロッパの歴史・芸術・思想の交差点にあり、ゴシック、ルネサンス、バロック、そして近代の建築が高い保存状態のまま一つの都市景観に溶け合っていること、市街中心部を流れるヴルタヴァ川が中欧の主要水系であるエルベ川につながり、通年での観光需要を生んでいることも指摘されています。
敷地そのものが、いまも修道士が暮らす現役の修道院であるという点はプラハでも特異です。ホテルはその内部に慎重に線を引くかたちで共存しており、静謐な中庭や礼拝の営みが日常の背景として存在します。
アクセス
チェコ・プラハ Letenská 12/33, 118 00 Malá Strana
プラハ城の直下、マラー・ストラナ地区。カレル橋も徒歩圏
電話:+420 266 112 233
※最寄り駅・空港からの所要時間は公式サイトに記載がないため不明です。
施設概要
| 名称 | オーガスティン ホテル プラハ(Augustine Hotel, Prague)/2026年後半にケンピンスキーブランドへ改称予定 |
|---|---|
| ブランド | 改称までホワイトレーベル(2026年4月1日〜)、2026年後半よりケンピンスキー(Kempinski) |
| 所在地 | チェコ・プラハ Letenská 12/33, 118 00 Malá Strana(聖トマス修道院内) |
| 開業予定(再開時期) | 2026年後半にケンピンスキーとして改称・再スタート(具体的な月日は不明)。既存ホテルとして営業は継続 |
| 客室数 | 101室(うちスイート20室) |
| 主な施設 | 専門レストラン、2つのバーコンセプト(ザ・リフェクトリー・バーを含む)、スパ、フィットネスセンター、ザ・モナスティック・ライブラリー、400平方メートル超のイベント・会議スペース、650平方メートル超の屋外テラス・庭園 |
| 設計監理 | 不明(改装のデザイン担当は未公表) |
| 施工会社 | 不明 |
| 事業主体 | ケンピンスキー・グループ(完全所有。取得価格・売主は未公表) |
| 運営 | ケンピンスキー・ホテルズ |
参考価格
本ホテルは改称前の現在も営業を続けており、予約が可能です。Trip.com日本語版の同ホテル詳細ページでは、2026年9月8日時点で「61,108円から」と表示されていました(対象の客室タイプ・宿泊日は明示されていません)。ケンピンスキーブランドとしての改称後の料金体系は未公表のため不明です。改装の内容と価格帯が判明した段階で追記します。
出所
- Kempinski Hotels「Kempinski Group announces the acquisition of Augustine Hotel Prague」(2026年4月2日)
https://www.kempinski.com/en/press-room/kempinski-group-announces-the-acquisition-of-augustine-hotel-prague - Kempinski Hotels「Luxury 5-Star Hotel In Prague | Augustine Hotel, Prague」(公式ホテルページ)
https://www.kempinski.com/en/augustine-hotel - Kempinski Hotels「Hotel Directions | Augustine Hotel, Prague」(公式・所在地/連絡先)
https://www.kempinski.com/en/augustine-hotel/overview/hotel-information/location - Trip.com「オーガスティン ホテル プラハ」(2026年9月8日閲覧、参考価格)
https://jp.trip.com/hotels/prague-hotel-detail-748862/augustine-hotel-prague/