帝国ホテルが2026年5月14日に公表した「中長期経営計画(2026年度改訂版)」では、帝国ホテル 東京のタワー館および本館の建て替え期間について「現時点で未決定」と明記されました。2021年に「2036年に完成予定の新本館」として走り出した日比谷の建て替え計画は、ここへ来て時期の前提が組み直されています。この記事では、公式資料で確認できる範囲に限って、発表から現在までの経緯を年次で整理します。

帝国ホテル 東京は、東京都千代田区内幸町に建つ日本を代表するホテルのひとつです。現在は本館とタワー館の2棟体制で、公式の施設概要によれば客室数は合計909室(本館560室、タワー館349室)となっています。このホテルを含む街区一帯では「内幸町一丁目街区開発プロジェクト(TOKYO CROSS PARK構想)」が進んでおり、帝国ホテルの建て替えはその一部として計画されてきました。

今回の改訂で変わったのは「建て替えをやめる」という話ではありません。公式資料に書かれているのは、タワー館と本館の建て替え期間が現時点では決まっておらず、建て替え準備期間のなかで検討を進める、という内容です。つまり「いつ着工し、いつ完成するのか」という時期の部分が、いったん定まっていない状態に戻ったことになります。

注目ポイント3選
① 新本館のデザインアーキテクトには田根剛氏が起用されています
2021年10月27日の発表で、帝国ホテルはATTA(Atelier Tsuyoshi Tane Architects)の田根剛氏を新本館のデザインアーキテクトに選びました。コンセプトは「東洋の宝石」で、迎賓館としての「宮殿」と人類進歩の証としての「塔」をひとつの建物に重ねる構想です。設計監理と施工会社は、公式資料では確認できていません。
② 「2036年完成」の前提が外れ、建て替え期間は「現時点で未決定」になりました
2022年3月25日の営業継続計画では、建て替え期間は2024年度〜2036年度とされていました。2026年3月27日の開示でタワー館の解体工事着工は2030年度末頃に移り、それまでタワー館は客室・宴会場とも営業を続けます。2026年5月14日の「中長期経営計画(2026年度改訂版)」では、北地区の新タワー(地上46階・地下4階)と新本館の竣工時期がいずれも「未定」と記されました。2026年度から2030年度までの5年間は「建て替え準備期間」と位置づけられています。
③ 中地区のNTT日比谷タワーは2031年度竣工予定で、別ブランドのホテルが入ります
本館の時期が白紙に戻る一方で、中地区の計画には日付が残っています。NTT日比谷タワーの低層階には1,000平方メートルを超える大宴会場と300平方メートル規模の中宴会場、高層階には宿泊特化型のスモールラグジュアリーホテルが入る計画です。このホテルは「帝国ホテルとは異なる新ブランド」とされ、ビルオーナーのNTT都市開発との調整が続いています。北地区の新タワーは三井不動産との共同事業で、容積率は900%から1,340%へ引き上げられます。
経緯 ― 2021年の新本館発表から「建て替え期間未決定」まで
2021年10月:新本館のデザインアーキテクトに田根剛氏を起用
2021年10月27日、帝国ホテルは「2036年に完成予定の帝国ホテル 東京 新本館 デザインアーキテクトとして ATTA・田根 剛氏の起用を決定」と題したリリースを公表しました。この時点で示されていたのは、新本館を2031年度に着工し、2036年に完成させるという想定です。デザインのコンセプトは「東洋の宝石」とされ、迎賓館たる「宮殿」と人類進歩の証たる「塔」を融合させた建物として構想されていました。

2022年3月:建て替え期間を2024年度〜2036年度とする営業継続計画を公表
2022年3月25日に公表された「帝国ホテル 東京事業所の建て替え期間中における営業継続計画について」では、建て替え期間を2024年度〜2036年度(予定)と明示しています。内訳としては、北地区の新タワー館を2024年度に解体着工・2030年度完成、北地区の新本館を2031年度に解体着工・2036年度完成、中地区のセントラルタワーを2029年度完成とする段階的な進め方が示されていました。中地区には1,000平方メートルを超える大宴会場と、100室規模のスモールラグジュアリーホテルを設ける計画でした。
2026年3月:タワー館の解体工事着工を「2030年度末頃」に
2026年3月27日、帝国ホテルは「(開示事項の変更)『帝国ホテル東京 タワー館営業終了に関するお知らせ』の一部変更について」を開示しました。より質の高い事業計画の検討に要する期間などを踏まえ、タワー館について2030年度末頃の解体工事着工を目指すことを決定した、という内容です。あわせて、この解体工事着工までの間はタワー館でのホテル事業(すべての客室および宴会場等)と不動産賃貸事業の営業を行うことも明記されました。当初の計画にあった2024年度の解体着工からは、大きく後ろ倒しになっています。
2026年5月:中長期経営計画の改訂で建て替え期間が「未決定」に
2026年5月14日に公表された「中長期経営計画(2026年度改訂版)」は、再開発計画全容のスケジュール図に「タワー館及び本館建て替え期間については現時点で未決定であり、建て替え準備期間の中で検討を進めてまいります」との注記を付けました。あわせて再開発計画概要の一覧でも、北地区の新タワー(地上46階・地下4階)と新本館(一棟建てグランドホテル)の竣工時期はいずれも「未定」と記載されています。2021年の発表時に掲げられていた2036年という完成年は、公式資料の上では姿を消したかたちです。
同計画では、2026年度から2030年度までの5年間を「タワー館営業再開・京都本格稼働期間(建て替え準備期間)」と位置づけています。期間中の最重要課題として、中地区の新規事業計画(宴会場・ホテル)の推進、全社的な稼ぐ力の強化、マーケティング力の強化による顧客政策の拡充が挙げられており、東京事業所の建て替えについては「この5年間において事業計画の質をより高めていく」と記されています。建築費や労務費、エネルギー価格の高騰が足元の外部環境として明示されている点も、今回の見直しを読むうえでの前提になります。2026年3月の開示で示された「より質の高い事業計画の検討に要する期間」という説明とあわせて読むと、工事費の見通しが立てにくい局面で完成時期をあえて固定しなかった判断と見られます。
動いている部分 ― 中地区のNTT日比谷タワーは2031年度竣工予定
本館とタワー館の建て替え期間が未決定になった一方で、中地区の計画は時期が示されたままです。公式資料によれば、内幸町一丁目街区の中地区に建つ「NTT日比谷タワー」の竣工時期は2031年度(予定)で、建物完成後に順次開業するとされています。低層階には最新の映像音響施設を備えた帝国ホテルの宴会施設(1,000平方メートルを超える大宴会場と300平方メートル規模の中宴会場)が、高層階には宿泊特化型のスモールラグジュアリーホテルが入る計画です。このホテルについては「帝国ホテルとは異なる新ブランドを展開」と明記されており、ビルオーナーであるNTT都市開発との調整を進めるとされています。
北地区の新タワーについては、三井不動産との共同事業としてオフィス・賃貸住宅の商品価値向上を図ること、再開発に伴う容積率の増加(900%から1,340%へ)によって収益力を強化することが示されています。ただし、こちらも竣工時期そのものは「未定」です。

周辺エリア
帝国ホテル 東京が建つ内幸町一丁目は、日比谷公園の西側に接する一角です。目の前には日比谷公園の緑が広がり、東京宝塚劇場や日生劇場、帝国劇場などが集まる劇場街が徒歩圏にあります。皇居外苑や二重橋も歩いて向かえる距離で、銀座の中心部までも徒歩で移動できます。

一方で、この一帯は官公庁街と業務集積地の性格も併せ持っています。霞が関の中央省庁、虎ノ門・新橋のオフィス街が隣接し、内幸町一丁目街区そのものが大規模な再開発の対象になっています。ホテルの建て替え計画も、この街区全体の開発と歩調を合わせて進むことが公式資料に示されており、周辺の景色は今後長い時間をかけて変わっていくことになります。
アクセス
〒100-8558 東京都千代田区内幸町1-1-1
最寄りは東京メトロ日比谷線・千代田線および都営三田線の日比谷駅で、地下通路でつながっています。JR有楽町駅、東京メトロ銀座線・丸ノ内線の銀座駅、JR新橋駅からも徒歩圏です。羽田空港からはリムジンバスや鉄道でのアクセスが一般的で、東京駅からもタクシーで短時間の距離にあります。
施設概要
| 施設名 | 帝国ホテル 東京(Imperial Hotel, Tokyo) |
|---|---|
| 計画名 | 内幸町一丁目街区開発プロジェクト(TOKYO CROSS PARK構想)内の帝国ホテル 東京 建て替え計画 |
| 所在地 | 〒100-8558 東京都千代田区内幸町1丁目1番1号 |
| 運営・事業者 | 株式会社帝国ホテル |
| 現施設の客室数 | 909室(本館560室/タワー館349室) |
| 現施設の構造・階数 | 本館:地上17階・地下3階/帝国ホテルタワー:地上31階・地下4階/駐車場ビル:地上11階・地下2階 |
| 敷地面積 | 24,379平方メートル |
| 建築面積 | 19,540平方メートル |
| 延床面積 | 240,250平方メートル |
| タワー館 解体工事着工 | 2030年度末頃を目指す(2026年3月27日開示) |
| 新タワー(北地区) | 地上46階・地下4階/主要用途:賃貸住宅、サービスアパートメント、オフィス、商業・料飲施設等/竣工時期:未定 |
| 新本館(北地区) | 一棟建てグランドホテル/主要用途:ホテル、宴会場、料飲施設等/竣工時期:未定 |
| 中地区 NTT日比谷タワー | 竣工時期2031年度(予定)、建物完成後順次開業/宿泊特化型スモールラグジュアリーホテル(帝国ホテルとは異なる新ブランド)および宴会場 |
| デザインアーキテクト(新本館) | 田根剛氏(Atelier Tsuyoshi Tane Architects) |
| 設計監理 | 不明(公式資料に記載が確認できません) |
| 施工会社 | 不明(公式資料に記載が確認できません) |
| 共同事業者(新タワー) | 三井不動産株式会社 |
| 中地区ビルオーナー | NTT都市開発株式会社 |
| 公式サイト | https://www.imperialhotel.co.jp/tokyo/ |
なお、現本館の竣工年や設計・施工を担当した企業名については、今回参照した公式資料の範囲では確認できなかったため「不明」としています。また、建て替え後の新本館・新タワーの施工会社も、公式に公表された情報は見当たりませんでした。
※本文は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。タワー館・本館の建て替え期間や新本館・新タワーの竣工時期、設計監理・施工会社など未確定の項目は今後変更となる場合があります。
出所
- 株式会社帝国ホテル「中長期経営計画(2026年度改訂版)」2026年5月14日(PDF)(新本館・新タワーの竣工時期および施工会社に関する記載は確認できず)
- 株式会社帝国ホテル「中長期経営計画」(https://www.imperialhotel.co.jp/company/plan)
- 株式会社帝国ホテル「(開示事項の変更)「帝国ホテル東京 タワー館営業終了に関するお知らせ」の一部変更について」2026年3月27日(PDF)
- 株式会社帝国ホテル「帝国ホテル 東京事業所の建て替え期間中における営業継続計画について」2022年3月25日(PDF)
- 株式会社帝国ホテル「2036年に完成予定の帝国ホテル 東京 新本館 デザインアーキテクトとして ATTA・田根 剛氏の起用を決定」2021年10月27日(PDF)
- 帝国ホテル 東京「施設概要」(https://www.imperialhotel.co.jp/tokyo/overview)(2026年10月閲覧。現本館の竣工年および設計・施工を担当した企業名に関する記載は確認できず)
- 日本経済新聞「帝国ホテル東京の本館建て替え、時期未定に 36年度までの計画見直し」2026年5月14日(記事)※公式発表の補強として参照しています